No.19 | 試験管で熱音響 |
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ゆうれい試験管ふたたび
私が初めて出会った熱音響現象は1993年真夜中の理科室で出会った奇妙な現象、No.2「ゆうれい試験管」の実験でした。それから10年後の2003年、スターリングエンジンを始めて5年後に、見直される日が来ました。
やり方
ガラス試験管(最も普通な化学用試験管、ホウ珪酸ガラス製)の底近くにまるめたスチールウールを入れ、スチールウールの底側の部分をバーナーで熱すると、やがてポーーと音が鳴り始めます。
口径18mm、長さ18cmの試験管では振動数は500Hz前後です。 スチールウールの温度勾配が小さくなってしまうと、止まるので、ぬれティッシュを巻いて置くと、長い間鳴り続けます。 加熱は化学室バーナー、カセットコンロでOKです。 |
注意点
@スチールウール 少し荒いものの方が適しています。「ボンスター」だとNo.2(やや荒い)のもので上手く行っています。台所タワシ用としてまるめて売られているNo.1でも可能ですが、流動抵抗を増やさないようふんわりまとめましょう。 スチールウールは線材の向きを試験管と平行にして使います。ギューギューに詰めずなるべく均一にふんわり、しかし、試験管を逆さにしても落ちて来ない程度のきつさになるような量をまるめて、試験管に押し込みます。 ※研究用の大きな装置では金網を積層したものや、蜂の巣状の整形品を使っているようです。ステンレス金網をロール状にまるめて入れても可能ですが、性能はあまり良くありません。 A長さと位置 |
熱音響エンジンの動作
スチールウールの加熱されている部分は高温、その他は比較的低温であり、温度勾配ができています。 スチールウールはすきまが多いので、空気が流通できます。自励振動が起こると、試験管内の気柱には、約4分の1波長の音波が定常波を作っています。 ちょうどスチールウール内の小さな範囲の空気団に着目します。 右図のように、管内の空気全体が右に動くとき、その空気団はスチールウールの低温部に接触し冷やされます。つまりスチールウールに熱を渡します。冷やされた気体は圧力が下がり、収縮が始まります。 空気団は冷却→収縮→加熱→膨張→ のサイクルを繰り返します。空気団の膨張・収縮は試験管内部の気柱全体をゆさぶり、定常波を励起します。 |
エンジンとしての応用
☆上の説明の気体サイクルがスターリングサイクルになっていれば、熱音響スターリングエンジンということになります。具体的な利用法としては、発生する音波をもう一つの熱再生器に当てることで、熱音響ヒートポンプを実現する装置などの研究が行われているようです。作られているのは、通常数mの金属製共鳴管を持つ大型エンジンであり、内部気体は加圧したヘリウムが用いられます。
☆このエンジンを動力に?→実験No20「熱音響カー」
☆このエンジンで発電を?→実験No22「熱音響発電」
web情報
熱音響現象…名古屋大水谷研のページにある熱音響現象の解説です。
DeltaE…ロスアラモス研究所の熱音響スターリングエンジン
シンギングパイプ…鉄パイプに金網を挿入した製品です。レイケ管を製品化したものです。9800円はちょっと高い。自作すると数百円。
釜鳴り神事(香川県長尾町)…元祖かま鳴り? これも熱音響現象。