No.2 | ゆうれい試験管 |
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真夜中の理科室で出会った、奇妙な現象。試験管がポ−−−と気味悪い音を出し続けます。いったいなぜ?
やり方 @試験管に硫黄粉末を1フィンガー(指1本の高さ)程度取ります。 A親指大に軽くまるめたスチールウールを硫黄から1、2cm離れた位置まで押し込みます。 B試験管ばさみで持ち、ガスバーナーで下部を加熱します。 B硫黄が液化し沸騰します。スチールウールは下部から赤くなって、反応しはじめ、ポーと音が鳴り出します。反応が終わるまで数秒から数十秒、鳴り続け、音程もあやしく変化します。 |
注意点 ・スチールウールはギューギューに詰めず、適度にまるめる程度にします。 |
おまけ情報
☆93年ごろ、真夜中の理科室で偶然、見つけて、ビックリしました。熱エネルギーで音波を生じる熱音響現象の一つです。長い鉄のパイプに金網を入れたものの下部を熱するとボーと音がするレイケ管などの現象は以前から知られています。
☆なぜ音程が変化? 試験管の長さで音の高低がきまります。これは、もちろん気柱の共鳴です。試験管の長さが約4分の1波長の定常波が発生しています。では、音程があやしく変化するのはなぜでしょうか。 v=f・λ の関係を考えると、試験管内の音速が変化しているからでしょう。化学反応の熱によって温度が変化して音速が変化、そのため音程が変化するわけです。
☆なぜ音が鳴るの? −−熱音響自励振動−−
スチールウールはすきまが多いので、上下に空気が流通できます。 硫黄とスチールウール(鉄)とが触れあう部分で熱が発生しているので、スチールウールの下部は高温、上部は比較的低温であり、温度勾配ができています。 スチールウール内の気体がわずかでも上向きにゆれると、スチールウール内の低温部に接触して冷やされます。冷えると気体は収縮するので、上の方の気体を下に引っぱります。引っぱられて下向きに動きだした気体はスチールウールの高温部に接触して加熱され、今度は膨張するので、運動方向は上向きに転じます。 このように始まったゆれは成長して自励振動となります。そのとき、試験管の口が振幅最大となり、底は振幅ゼロとなる気柱共鳴の振動に近いものになっています。なわとびの定常波を一カ所でこぐように、スチールウール内の気体の膨張・収縮によって励起され続け、結果として、与えた熱エネルギーの一部を音波のエネルギーに変換しているのです。 |
☆発展の実験、工作として
2003年新掲載の実験 No19「試験管で熱音響」, No20「熱音響スターリングカー」 もご覧下さい。