kobysh科学工作館スターリングエンジン

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Single Gao の考え方 1999年11月

1.省エネルギー 強力バーナーと巨大な放熱フィンは大仰な廃熱生産機になりかねない。やはり、スターリングエンジンの特徴・存在価値をアピールしやすい模型でなければ‥。
2.教材としての単純さ すぐに作動原理が見えて来る、中高校生が見て解りやすい構造。
3.精密な工作技術は追求しない そうしないと、何でも工作機械の性能と熟練度に帰着してしまうので、工夫が生まれない。

具体的な方法

(1)試験管とスチールウール


 
<熱伝導ロス> 普通、ガンマ型スターリングエンジンのディスプレーサシリンダは耐熱性と熱伝導とを考えて金属が使われます。ところが、そうすると、ディスプレーサシリンダの壁を伝わって高温度部から低温部へ熱が流れてしまいます。これは完全にムダな熱であり、損失となります。温度勾配を維持するためには、絶えず加熱部に大量の熱量を与え続ける必要があり、放熱部では蓄積する熱を外部に放出しなくてはなりません。このため、加熱部には強力バーナーが、放熱部には巨大な放熱フィンが必要となります。
  

test-tube-mini.jpg

 <試験管> そこで着目したのが、ガラス試験管です。化学実験で使う試験管はパイレックス(ほう珪酸ガラス)で出来ており、なんとか四五百度ていどの温度に耐えられます。難点は熱伝導が悪いということ。加熱部でガラス壁ごしに気体、ディスプレーサピストンへ伝わる熱抵抗が大きいことは熱機関として致命的です。しかし、伝導が悪いという事は、言いかえれば断熱性が良いという事です。容器側面の熱伝導ロスを格段に少なくすることが可能となります。
  
ディスプレーサピストンにも断熱材を使用すれば、その効果が上がります。材料として、スチールウールに着目しました。ステンレス棒に台所のスチールウールを巻いてディスプレーサピストンとします。高温部から低温部へ流れる熱がなくなり、ピストン表面の温度勾配を維持します。また、大きな表面積のため、作動気体が素早く熱交換を行います。つまり、内臓形の熱再生器として働き、熱効率を向上させます。

(2)フライホイールの廃止
  フライホイールは車体重量を増やす原因です。ところが、フライホイールがないと、スターリングエンジンは回りません。不充分なフライホイールではエンジンが脈動して結局は気体のする仕事量を減らします。
  多気筒化によって脈動を減らし、フライホイールを軽くする事ができます。ただ、これは在来の内燃機関でよく使われている方法であり、真面目すぎるアプローチです。
  そこで、フライホイールにたよらず、
車体の慣性を利用してエンジン回転をスムーズにする方法を考えました。まず、減速比をなるべく小さくしました。singleGAOは直径7.5cmの車輪に直接パワーピストンを連結し、エンジンの1ストロークで車体は約24cm前進します。この程度に小さな減速比であれば、車体の慣性がエンジンの急な加速減速を抑えて、脈動を防ぎます。この方法で、フライホイールを廃止することが出来ました。
 もし車輪やピストンなどの質量がゼロならば、車輪が接地していないと、回転できません。実際には車輪やピストンの質量などの存在のため、接地していなくても回転しますが、低速回転時はやはり脈動を感じます。乗り込んだら、きっと乗り心地が悪いでしょう。模型ならでは方法です。

 

(3)気体シール
 密閉した作動流体を使用するスターリングエンジンの宿命的な課題ですが、特殊なシール法を使えない我々も何とか解決しなければエンジンは回りません。ガラス注射筒を摺り合わせ部に使ったアルファ型模型エンジンに人気があるのも、実のところは、可動部の気体漏れに悩む必要がないためではないでしょうか。
 singleGAOのディスプレーサでは単純に市販の真鍮パイプとステンレス棒という安価な材料を見つけて、これで済ませています。パイプの長さを最適化して、限度以下の摩擦力ながら必要な気密を得ています。

(4)少エネ・省エネ
 singleGAOの消費するエネルギーはごく少量です。室温に冷え切った状態からマッチ一本の加熱でも始動する事が出来ます。アルコールランプやバーナーで数十秒加熱すれば、数十メートル走る事が出来ます。その後でも放熱部は手で触れられる程度に温まるだけです。

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