自作スターリングエンジンの出力を調べよう。
2001.10.4. 土浦工業高校 小林義行
発電電力で出力を見る
スターリングエンジンの出力で直流モーターを回します。モーターの発電出力をすべり抵抗器に接続して抵抗値を変えると、エンジンの負荷を変えることができます。ちょうど良い負荷のとき、エンジンの出力は最も大きくなります。 その時すべり抵抗器の両端の電圧V[V]と流れる電流I[A]を測定すれば、エンジン出力(仕事率、ワット数)を測ることができます。 ただしエンジン出力の100%が発電出力にはなりません。たとえば80%はすべり抵抗器へ、残り20%はモーター内部で熱になるという具合です。この割合がわかっていれば、エンジン出力を逆算して求められます。 |
発電電力の測定 |
モーターと増速ギア | |
太陽電池用のモーター(マブチRF-500TB)を発電機として使用しました。
10ヘルツ以下の低回転数でもちゃんと負荷(ブレーキ)がかかって、エンジンが力を発揮できるように、ギア(タミヤ製ギアボックス用)を使って約4倍に増速しています。(ギア比11:41) 力の弱いエンジンや高速で回転するエンジン(回転数10Hz〜100Hz程度)ならばギアを使わず発電モーターに直結するのが良いでしょう。 |
モーターの特性について | |
使用したモーター(マブチモーターRF-500TB)の発電特性はグラフ1の通りです。モーターの内部抵抗等のために負荷抵抗によって若干変動しますが、負荷抵抗10〜30Ωの測定範囲では発電効率は75〜80%です。この値で発電出力を軸出力に換算すれば良いわけですが、負荷抵抗にかかわらず一定値として換算してもエンジン特性を見る目的には十分です。(測定してみると2000mW程度までOKです)なお、これはモーターのみの特性です。すべりの悪い増速ギアになっていると、そこでもエネルギーが消耗してしまいます。
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できれば回転数も
できれば回転数を同時に測定できると、エンジンの性能をさらにくわしく調べることが出来ます。 右の写真ではフライホィール軸に取り付けた遮光板と光センサーの出力をカウンター(オシロスコープのカウンター機能で代用した)に接続して回転数を測定しました。 数ヘルツ以下であれば、ストップウォッチで測ることも出来ます。 |
できれば加わる熱量も
熱効率とは |
加わる熱量を測るには、エンジンに加わる熱量を一定にして、時間をかけてエンジン出力を測定します。
エンジンの加熱部にヒーターとして直接ニクロム線を巻きつけ、スライダックで電圧をかけます。その外側に断熱材としてグラスウールを巻きつけます。
このときエンジンに加わる1秒あたりの熱量は
q=V・I [W]
ただし、V[v]はニクロム線の両端電圧、I[A]は流れる電流
で求められます。下のnoBBベータ測定はq=30[W]となるように調整して行いました。
ボア[mm] | ストローク[mm] | 行程容積[ml] | |
ディスプレーサ | 19 | 60 | 17.0 |
パワーピストン | 17 | 30 | 6.8 |
冷却部は通常は自然空冷ですが、測定では長時間の加熱になるため、冷却部に少量ずつ水を滴下しながら測定を行いました。エンジンの最大出力時の負荷抵抗は約10Ωであることから、簡単のため発電効率を一定75%としてエンジン出力(軸出力)を算出しています。
表2.NoBBベータ出力特性
グラフ2.noBBベータの出力特性
出力
トルク |
トルクとは 軸の回転力のことです。トルク10gw・cmとは、半径2cmプーリーで5gの重りを巻き上げられる回転力です。トルクが大きいほど力のあるエンジンということです。 出力との関係は (トルク)=(出力)÷(2π×回転数)÷9.8×100 [gw・cm] [mW] [Hz] | |
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回転数[Hz] |
noBBベータの測定結果について
@最高出力時、noBBベータの熱効率は1%ていどです。小さな値ですが、模型スターリングエンジンとしては高効率です。これは、第一にディスプレーサケース上の熱流が少ないので伝熱損失が小さいこと、第二にスチールウールが熱再生器として機能している、この2つが優れているためと考えられます。
A回転数9Hzを超えると急激に出力が低下する原因は、まずディスプレーサピストン(スチールウール)の側面を空気が通り抜ける際の流動抵抗のためです。その他としては、注射器や軸などで発生する摩擦力、振動によるエネルギー損失が考えられます。