はずみ車にエネルギーを蓄める
自動車の回生ブレーキは従来なら摩擦熱にして捨ててしまっていた運動エネルギーを発電に使って、充電池に蓄えることで、再利用するようにした仕組みです。都内の電車のように多数の電車が架線で結ばれている地域では、回生ブレーキで得られた電力が、即座に他の電車の加速に利用されていますが、自動車ではそれができないので、蓄電池が必要になります。
充電池の代りにコマのように回るフライホィールを回転させることで運動ネルギーとして蓄えることもできます。そのような装置を備えたバスが一時期欧州で走っていたそうです。その後、F1カーに搭載された装置もあります。電力をフライホィールの回転として蓄える蓄電器はフライホィール蓄電器(flywheel-battery)と呼ばれます。
現在、日本で稼働しているものとしては、京浜急行電鉄の逗子フライホイールポスト(逗子市池子1丁目1)という施設があります。ここの蓄電装置を利用して、逗子線で使われる電力の18%程度を再利用しているそうです。多数の電車路線を持たない地域の私鉄では、このような蓄電施設が有効なのです。
再生可能エネルギー利用に有効
フライホィール蓄電装置は急速な充放電が可能で、エネルギー変換効率が良く、耐久性についても有利なことから、風力や太陽光など、天候まかせで不安定な再生可能エネルギーによる電力源と組み合わせることが期待されています。
それを想定して、新世代のフライホィール技術の開発が進んでいます。右は、JRが開発している超電導磁気軸受を用いたフライホイール蓄電システムで、100kWhの電力量を蓄えることができます。 空気抵抗が発生しない真空容器の中で、直径2m質量4トンの炭素繊維強化プラスチック製フライホィールを高速回転させて大きなエネルギーを蓄えます。回転軸を超電導磁石で浮かす方式がこの装置のミソです。
ブラシレス・コアレスが理想
外部からフライホィールへエネルギーの出し入れを行うモーター兼用の発電機もロスの少ないものが必要です。現在の電気自動車等のモーターはブラシによる摩擦が発生しないブラシレスモーターが採用されています。しかし、コイルには鉄の芯を使っているため、鉄の交代磁化に伴う鉄損(熱を発するロス)があります。
さらなる高効率化のためには、鉄芯を用いない(コアレス式)のモーターが求められます。フライホィール装置では、回転が非常に速いので、ブラシレス・コアレス化は必須です。JRの装置では、現段階の現物はまだそうなっていないようですが、発表論文を見ると、その方向で開発を進めていると思われます。
ブラシレス・コアレス・モーター発電機
私たちは、模型で実験です。以前に開発したコアレス発電機(「10円玉の重みで発電」を改造した教材が右の写真です。少しヤワなため、回転が上がるとべニア板が変形して、わずかに接触しがちで変な音がするポンコツですが、立派なブラシレス・コアレスのモーター発電機です。ローターに回転トルクが加わるのは1回転に一瞬×2回だけなので、まるでエンジンが低速回転しているかのような音がします。
Youtube動画をごらん下さい。 https://youtu.be/k1V29EPdJck
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逗子フライホィールポスト
出典:JR(公)鉄道総合技術研究所HP
出典:「フライホイール駆動用永久磁石同期電動機の開発」、鉄道総研報告
2013年7月号、pp.35-40 (2013)
https://www.rtri.or.jp/rd/division/rd79/rd7920/rd79200107.html
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