No.72

酵素のはたらき模型

2022年7月掲載

enzyme_action

  酵 素

 生体がつくる触媒物質を酵素といいます。例えばデンプンに対するアミラーゼ、過酸化水素に対するカタ ラーゼなどです。酵素は特定の物質(「基質」といいます)にしか働きません。そのことを「基質特異性」といいます。

 その説明 として、左のような図が使われます。基質の表面形状や構造に対して、酵素には鍵と鍵穴のようにピタッと嵌る 部分「活性部位」を持ってい るから、ということです。
 じゃ、そのあと、たとえば基質が分解酵素に嵌るとなぜ分解されるのか。たぶん、嵌った分子内の変形などがあっ て、その結果分かれることになるのでしょうが、 そこは少なくとも高校生物では触れられません。

 ともかく、基質は嵌っては分解される。一方酵素は はじ めと 何も変化しないので、また次の基質を分解する。このことを理解するというのが教科書の内容です。

idea ア イデ ア
 
 形がピタリとはまる基質と酵素の模型を発泡スチロールで作って、説明すれば良いか。でも、なにかアク ションのあるものにしたい。ピタッと貼りついていたものがパッと離れるような仕掛けはないものか。

 そして、左図のような模型アイデアが出てきました。五角形と六角形が合体したものが基質分子、それにピッタリの形のものが酵素 とします。図の位置ではN極(図の赤)とS極(図の青)間の引力のため、3つは引き合っています。   しかし、六角部分の中の円形テーブルが回り、そのうちS極が登場すれば、五角形も酵素も反発してはなれるで しょう。
 このようにして、センサーもマイコンも使わない、原始的な工作の案ができました。

plan
図面
 
 酵素は基質が離脱後、元にもどります。この模型では、円盤が回って離脱した後、
磁 石が元の位置に戻るように しないといけません。そこで、円盤につけたカムでモーターを停止するようにしました。

 軸の減速比は719対1と大きいですが、軸に直付けしているテーブルの直径が大きいので、磁石の力が強すぎるとモーターが負けます。 もっと大きな減速比が 欲しいですが、そこは、五角形や酵素の方の磁石の強さ や距離で調節することになります。

酵素
が六角形部分にピタッと接触すると、酵素に貼ってあるアルミホイルが六角部分の側面の検知電極をショートさせることで、モーターを スター トさせます。

テーブルが一回りする間に分離が起こり、元の位置に来ると、カムによってスイッチが切れ停止します。

内部
 製作

 六 角の箱はシナベニアとバルサ材で作成、五角と酵素は発泡スチロールです。
円形テーブルの側面の磁石は小さな円盤形ネオジムを木材を台座にホットボンドで固定しました。磁石の個数は図面より多めに付いています。
 反対側の側面にはバランス重りとして鉛の線を貼り付けました。


下の写真‥あまり滑りの良くない実験台の上でも、分離すると酵素と五角形部分の両方が磁石の反発力に押されて2cmていど離れてくれま す。
接触 
分離前 分離後 
                  
黒板に  授業では、黒板にぶら下げて使用します。
もちろん、分離後は五角形部分と酵素が落下します。
五角形部分を付け直して、何回でも同じ動作を行わせることができます。

写真は紙をはさんで分離動作が発動しない状態。電源スイッチがないので、かけて置いとくときはこの状態です。

「また、変なもの作った」という笑いから、できれば興味喚起に つながれば、という教材です。

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