No.55 | 単レンズ顕微鏡 | 2010.4.23.掲載 |
レーウェンフックの顕微鏡
オランダのアントニ・レーウェンフック(1632 - 1723)は初めて微生物の世界を見た人です。ゾウリムシや赤血球、精子など、いろいろな原生生物や細胞を発見しました。彼が自作した顕微鏡はレンズを1つだけ使った「単式顕微鏡」で、高倍率の虫眼鏡のようなものです。当時、ロバート・フックの複式顕微鏡がせいぜい50倍だったのに対し、200倍の高倍率を実現していました。
レーウェンフックの顕微鏡を真似て、プレパラートを観察できるものを作ってみました。
黒いシートに直径2mmくらいの球レンズが固定されています。ユリアねじを回してピントを合わせます。
球レンズを作る
市販のカセットのガストーチを使って、ガラス棒から小さなガラス玉を作ります。クリスタルガラス(つまり酸化鉛入りガラス)やソーダガラス(ソーダ石灰ガラス)が加工しやすい。理科室のガスバーナ(ブンゼンバーナ)でも炎を大きくすれば可能です。ただし、パイレックス(硼珪酸ガラス)は軟化温度が高く、送風機付きのガラス細工バーナでないと難しいです。
(1) ガラス棒の一箇所を充分やわらくし、炎の外に出して引き延ばすと、数十センチの長さの細いガラスができます。
(2) バーナの炎を小さくします。ガラスの細い部分を、炎に入れると先端の部分が熱せられ液状の玉になります。
(3) ガラス玉が目的の大きさになったら、ゆっくりと炎の外に出します。
玉の直径は2mmていどの大きさに作ると良いでしょう。
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レンズホルダを作る
球レンズが出来たら、レンズをはめるホルダを作ります。厚さ0.5mmていどの黒いプラ板(PP板、100円ショップ等にある書類ケース)で作りました。スチロール板や塩ビ板でもよいでしょう。2枚の直径1.6mmのステンレス棒の先端をバーナであぶってプラ板を突き通して穴を明けます。ガラス球が穴から落っこちない大きさにします。両面テープを使って、2枚のプラ板の間に球をはさみ込んで貼り合わせます。もちろん、レンズに両面テープがかからないようにします。
プレパラートなどに乗せて、裏側から光を当て、視界やレンズの具合を確かめます。写真はボタン電池を発光ダイオードごと洗濯ばさみではさんだミニライトです。一瞬でもチラッと対象の拡大像が見えたら、しめたものです。このままではっきりした拡大像を続けて見るのは至難の技です。レンズと対象物が0.5mmていどでピントが合うので、プレパラートに乗せたレンズホルダを微妙に指で持ち上げる必要があるからです。
もし、視界をさえぎるように巨大が繊維が見えるときは、ホルダの穴のバリが残っているので、穴をきれいに直して下さい。
フレームと調節ねじを作る 厚さ3mmの発泡塩ビ板を使いました。発泡塩ビ板はカッターで切ることができ、少量の瞬間接着剤で丈夫に接着できます。 ステージの上下を調節するねじとして、M3のユリアねじを使います。ねじ穴は直径2.5mmのドリルで穴を開けた後、3mmタップでねじを切ります。でなければ、2.8mmの穴を開けて、そのままユリアねじをねじ込みます。
使い方 下図のようにステージの上にプレパラートを置き、一端を紙クリップでとめます。
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単レンズ顕微鏡の倍率は?
遠くにある物体を近くにもって来れば、大きく見えます。小さいものを近くにもって来れば、見える像の大きさは距離に反比例して大きくなりますが、人の目が焦点を合わせられる距離には限界があります。普通、25cmくらいまでは焦点が合います。これを明視距離と呼びます。虫メガネを使うと、近距離でも焦点が合うので、対象を近づけて、大きな像を見ることができます。
虫眼鏡の倍率は人の明視距離(約25cm)とレンズの焦点距離f [mm]のわり算 で求められます。
したがって、焦点距離が小さいレンズを使えば高倍率になります。球レンズの焦点距離は
(ここで、nは屈折率、rは球面の半径)
これより直径D[mm]の球レンズの焦点距離は となり、倍率を求めると、次のようになります。
球レンズ顕微鏡の倍率=
ガラスの屈折率を1.6 ,ガラス球の直径2mmを代入すると、約190倍 となります。